前回(プラスチックが泣いている Part1)ではプラスチックがなぜ環境問題を引き起こすのかについて説明をしました。
今回は3種類のリサイクルの特徴についてお話していきます。
SDGs 12/17
本題に入る前に、リサイクルはSDGsを推進していくために重要です。
SDGs は17の目標があり、その中で12番目は11個のターゲットで構成され、目標(ゴール)は
【つくる責任 つかう責任】です。
ターゲット内で直接的にリサイクルを推奨しているのが【12-5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。】です。
マテリアルリサイクル(22%/87%)
使用済みのプラスチック製品をゴミ(廃棄物)にせず、溶かしてプラスチック原料に戻したあと、新たな製品へと再生させるリサイクルです。
マテリアルリサイクルには2種類あります。
- レベルマテリアル
プラスチックゴミを同じ製品の原材料としてリサイクルする方法です。 - ダウンマテリアルリサイクル
プラスチックゴミ(以下、廃プラ)を再生する際、同じ製品の原材料としては品質が劣る場合、品質を一段階落として別の製品の原料としてリサイクルする方法です。
メリット
- 資源の有効活用
再利用することで新しく製造する際に使う石油などの天然資源を減らします。 - 廃棄物量の削減
再利用することで廃棄量を減らします。 - CO2排出量削減
再利用することで焼却時に排出されていたCO2を減らします。
改善余地
- 品質低下リスク
分別不備や熱処理の影響で再生プラスチック製品の品質低下を引き起こします。 - コスト高リスク
リサイクルには複数の工程、設備投資がかかります。 - 再利用の限界
すべてのプラスチックをマテリアルリサイクルできるわけではありません。
ケミカルリサイクル(3%/87%)
使用済みのプラスチック製品をゴミ(廃棄物)にせず、化学的に分解し、新たに樹脂や化学物質に再生する方法です。
メリット
- 高精度のリサイクル
マテリアルリサイクルと違い、異なる種類のプラスチックが混入していてもリサイクルが可能です。 - 多様なリサイクル
化学分解や熱分解を通して水素やアンモニア、酢酸など原材料を回収、再利用により製造できる範囲が広がります。 - 天然資源の保護
廃棄物を資源として活用することで新しく製造する際に使う石油などの天然資源の消費を抑えます。
改善余地
- コスト高
設備投資に多額のコストが発生します。- 廃プラの安定的、継続的な確保
プラスチック資源循環法(※1)の施行や海外の廃棄物輸入規制があり回収スキームはできている。しかし量は足りても質(プラスチック以外のゴミの混在や汚れなど)が低いとリサイクルできません。- プラスチック添加物処理
プラスチックはその用途によって紫外線を防ぐためや、柔軟性を持たせるため、また燃えにくくするためなどの目的で添加剤が含まれています。これら添加剤はリサイクル処理時に有害ガスを発生させる、またリサイクル処理後も残存しますが処理技術が追い付いていない現状です。
(注1)プラスチック資源循環法(2022年4月施行)
- プラスチック使用製品設計指針に則してプラスチック使用製品を設計する
- 特定プラスチック使用製品の使用を合理化するために業種や業態の実態に応じて有効な取り 組みを選び、その取り組みを行うことにより廃棄物の排出を抑制する
- 自ら製造・販売したプラスチック使用製品の自主回収・再資源化を率先して行う
- 排出事業者としてプラスチック使用製品産業廃棄物などの排出抑制・再資源化を実施する
サーマルリサイクル(63%/87%)
廃棄物 を単に焼却処理せず、焼却の際に発生する 熱エネルギー を回収・利用すること。国際的にはリサイクルとみなされていないことからサーマルリカバリーやエネルギーリカバリーと呼ばれたりします。
メリット
- 廃棄物の有効活用
再資源化が困難な廃棄物でも複雑な工程がなく処理ができます。 - 天然資源の保護
焼却にはエネルギー(石油・石炭など)が必要ですが、廃プラは一般的に紙の2~3倍の発熱量を持っています。またプラスチックの種類によっては石油や石炭に匹敵します。そのためサーマルリサイクルの推進は石油や石炭など天然資源の保護につながります。 - コスト低
既存のゴミ焼却施設では約70%が余熱を利用しており、サーマルリサイクルは既存施設を活用できるので初期費用を抑えることができます。
改善余地
- 有害物質の発生
ゴミ焼却施設は、技術の進化でダイオキシン類対策基準は満たしているとしてもゼロにはなっていません。 - そもそもリサイクルではない!?
海外でも熱回収は行われています。しかし先に述べたとおりサーマルリカバリー・エネルギーリカバリーと呼ばれたりします。理由は海外ではリサイクルとは廃棄物を再利用、再資源化することなので、燃焼(焼却)はリサイクルではないと認識されているためです。従って日本のプラスチックリサイクル率は87%と発表されていますが、国際基準で見直すと25%となります。
3Rの優先順位
3種類のリサイクルについて特徴を説明しましたが、少し3R(リデュース・リユース・リサイクル)についてお伝えしようと思います。
循環型社会形成推進基本法
同法第6条、7条で処理の優先順位が法定化されています。
[1]発生抑制(リデュース)[2]再使用(リユース)[3]再生利用(マテリアルリサイクル・ケミカルリサイクル)[4]熱回収(サーマルリサイクル)[5]適正処分
使わない・つくらない、使っても繰り返し使う・再使用を考えてつくる。とても重要なことです。それでも廃棄するものは原料や化学物質として新たに役割を得る。それもできない場合はエネルギー源として役目を全うするということです。
しかしリサイクルの現状はほとんどがサーマルリサイクルに頼っています。廃棄物の複雑化、処理の容易さ、コストメリット、エネルギー源の確保などが理由として挙げられます。
ダイオキシン類対策特別措置法で定められた排出基準値はほとんどの事業所が達成しています。
しかし、燃やすことによる環境汚染は未だ完全に解決していません。
プラスチックは悪くない
プラスチック製品は必要です。しかし不必要になったときに私たちがプラスチックをヒールに仕立て上げているのではないでしょうか。プラスチックが悪いのではありません。リサイクルの仕方が悪いのです。
マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルをもっと伸ばす仕組みづくりが大切です。しかしそれと同じくらい安易に燃やすことをしない、これも大事なことだと考えます。
人手不足で選別(分別)工程を省きたい、今の施設を活用できるから安く処理できる、且つ海外依存が高いエネルギー源を国内で調達できる(エネルギー資源の海外依存)など上記理由を言い訳に環境汚染に影響を及ぼす、燃やす選択をしているのではないでしょうか。
次回は【プラスチックが泣いている】最終回です。